預言されていたイスラエルの運命(2) 出エジプト~祝福と呪い


前回はアブラハム契約について説明をした。今回の記事からは、アブラハム契約で示された内容やその原則が、イスラエル人の歴史に、具合的にどのように成就していくのか、その詳細を取り上げいく。

1)モーセによる出エジプト

ある時神は、アブラハムに対して、その子孫が将来どのような経験をすることになるのかを預言した。その時の詳細は、以下の通りである。

「アブラムに仰せがあった。「あなたはこの事をよく知っていなさい。あなたの子孫は、自分たちのものでない国で寄留者となり、彼らは奴隷とされ、四百年の間、苦しめられよう。14 しかし、彼らの仕えるその国民を、わたしがさばき、その後、彼らは多くの財産を持って、そこから出て来るようになる。15 あなた自身は、平安のうちに、あなたの先祖のもとに行き、長寿を全うして葬られよう。16 そして、四代目の者たちが、ここに戻って来る。それはエモリ人の咎が、そのときまでに満ちることはないからである。」(創世記15:13-16)

この中には、複数の預言が含まれているため、先に以下のように内容を整理しておく。

  1. アブラハムの子孫は外人居留者となり、四百年の間に、奴隷になる。
  2. 神は、異国の地の国民を裁き、多くの財産を持って、そこから出てくる

1)アブラハムの子孫は外人居留者となり、その地での四百年の間に奴隷になる。

■預言された年代: BC2000年頃
■預言の成就: BC1800年代~BC1400年代、イスラエル人はエジプトに留まり、その間奴隷となった。

Ancient Egyptian slave market, with Nubian slaves waiting to be sold.

Ancient Egyptian slave market, with Nubian slaves waiting to be sold.

アブラハムは二人の息子、「イシュマエル」と「イサク」を設けたが、アブラハム契約の祝福はイサクが継承した。続いて、イサクは双子の息子「エサウ」と「ヤコブ」を設け、ヤコブが契約を継承した。そして、ヤコブは合わせて十二人の息子たちを設け、彼らがイスラエルの十二部族の先祖となる。(ヤコブは人生の途上で神から「イスラエル」という新たな名をもらい、その名が現在のイスラエルの由来となった。)

ヤコブが130歳であった時(創世記47:9)、イスラエル一族は飢饉を生き延びるためにエジプトに下った。以降、四百年もの間、彼らは外人居留者として、エジプト国内にある「ゴシェンの地」という場所に留まった。

エジプトに下った当初は、ヤコブの息子の一人「ヨセフ」が、エジプトの支配者であったため、イスラエル一族は大いに恩恵を受けた。ところがその後、ヨセフを知らない王がエジプトで即位すると、イスラエル一族は、エジプト人から苦役を強いられ、奴隷として虐げられるようになっていった。理由は、神の祝福によってイスラエル人の人口が急激に増加したことを、エジプト人が恐れたからであった。

2)神は異国の地の国民を裁き、民は多くの財産を持ってそこから出てくる

預言された年代: BC2000年頃
■預言の成就: BC1400年代、エジプトに神の裁きが下り、イスラエル人はモーセに率いられ、エジプトを脱出する。

モーセに率いられ紅海を渡るイスラエル人

モーセに率いられ紅海を渡るイスラエル人

ここからは、日本人であっても誰もが知っているほど有名な聖書の話「十の災い・モーセの出エジプト」である。全能の神ヤハウェは、モーセを選んでエジプトに遣わし、エジプトの王ファラオに、イスラエル人を解放するように迫った。ところが、ファラオの心は頑なになったため、エジプトに「十の災い」が下り、ついにファラオは、イスラエルの民全員をエジプトから去らせた。

民はエジプトを出る際、「エジプトから銀の飾り、金の飾り、それに着物を求めた。・・・エジプトは彼らの願いを聞き入れた。」(出エジプト12:35)その後、エジプト人は再び心を頑なにし、イスラエル人の後を追跡してきたが、神が海を二つに分けて、イスラエル人がそこを通り抜けると、乾いた海の底まで追跡してきたエジプト人は、ことごとく海に飲み込まれていった。こうして、神の裁きによって、イスラエル人は多くの家財を携えてエジプトから脱出し、アブラハムに語られた預言の言葉が成就した。

アブラハム契約とエジプトの裁きの関係

エジプト人は、ユダヤ人への呪いとして、彼らの人口が増えないように、「生まれてくる男子を皆殺す」ように命じた。結果として彼らは、「十の災い」の最後の裁きで、「エジプト人に生まれた初子の男子が全て死ぬ」という災に遭った。その日、エジプト中で悲鳴で満ちるようになった。

またエジプト人は、ユダヤ人への民族的虐殺計画の第ニ段階で、「生まれてくる男子を全員溺死させる」という政策を打ち出した。その結果、エジプト人の軍隊は、紅海で溺死して死ぬことになった。

神はアブラハム契約の中で、「あなたを呪う者は呪われる」(創世記27:29)と語った。したがって、アブラハムの子孫であるユダヤ人を呪ったエジプト人は、同じ呪いによって災いを被ることになったのである。

奇跡は本当に起きたのか?

ここで、一つ触れておかなければならないことがある。聖書の素養が無い日本人なら、普通このような話を聞いても、すぐにそれが歴史的事実であったと認めることはできないだろう。だからここで、参考となる幾つかの根拠を述べておきたい。

まず、今になって、当時実際に起こった奇跡を完全に証明したり、再現したりすることは不可能である。また、出エジプトの記録に関して言えば、聖書以外に、それを確実に裏付ける資料があるわけではない。したがって、出エジプトの史実性を確認していくためには、聖書全体の内容を包括する、多角的な視点で考えなければならない。

まず、聖書の記録の信頼性については、基本的に世界中の専門家から高く評価されている。なぜなら、記録されている出来事には、考古学的な発見によって裏付けられているものも多く、記述の内容も具体的であるからだ。

次に、出エジプトの出来事は、単なる作り話とは言えないリアリティーがある。ユダヤ人は、この時以来、神がエジプトからユダヤ人を救ってくれたことを記念して、毎年「過ぎ越しの祭」を行っており、それがユダヤ人にとって1年の内で最も重要な祭りとして認識され、今日に至るまで続けられている。つまり、この出来事は、イスラエルの民族的アイデンティティーに、深く刻み込まれている出来事なのである。

最後に、もし本当に神が紅海を分けて、そこをイスラエルの民が通ったのであれば、その海底の地形は比較的なだらかになっているはずである。また神が、その海の底にエジプト人を彼らの戦車ごと滅ぼしていったのであれば、今日でもその海底に残骸が残っている可能性はある。そして、これらの証拠は既に調査されており、大変興味深い調査結果が出ているのである。詳しくは、以下のYoutubeの動画を確認して頂きたい。

#6 驚くべき発見!「出エジプトルート、紅海、シナイ山」 (*1)

最後に、聖書が神の霊によって導かれた書だという事実は、極めて重要である。つまり、聖書全体には、全知全能の神でなければ決してわからないような情報が、無数に含まれている。そして、聖書における神的な情報の主要な要素が、まさに預言なのである。本サイトには、聖書の預言に関する記事が多く掲載されていくことになる。それらの記事をお読み頂ければ、聖書が本物の神の言葉であることを理解できるようになるだろう。

祝福と呪いの原則

イスラエル人は、モーセに率いられてエジプトを脱出した後、神によって荒野へ導かれた。そしてシナイ山という場所で、彼らは、アブラハム、イサク、ヤコブの神ヤハウェと、民族的な契約を結ぶことになるが、それを専門的に「シナイ契約」という。これは強制的なものではなく、民の合意に基づく契約であった。そしてこの契約に伴い、民は神から律法を与えられたが、その律法の中心となる十の掟が、かの有名な「モーセの十戒」である。

こうしてイスラエルの民は、モーセを通してヤハウェから法律を与えられ、国家建設に必要な法体制が整えられる。そして、この契約の中には、後のイスラエルの歴史を貫く、重要な原則が含まれることになった。それが「祝福と呪い」である。この契約以降、イスラエル人は、ヤハウェの律法に従うならば、祝福され、背くなら呪いを招くことになったのである。(*2)

見よ。私は、きょう、あなたがたの前に、祝福とのろいを置く。27 もし、私が、きょう、あなたがたに命じる、あなたがたの神、主の命令に聞き従うなら、祝福を、28 もし、あなたがたの神、主の命令に聞き従わず、私が、きょう、あなたがたに命じる道から離れ、あなたがたの知らなかったほかの神々に従って行くなら、のろいを与える。・・・

31 あなたがたは、ヨルダンを渡り、あなたがたの神、主があなたがたに与えようとしておられる地にはいって、それを所有しようとしている。あなたがたがそこを所有し、そこに住みつくとき、32 私がきょう、あなたがたの前に与えるすべてのおきてと定めを守り行なわなければならない。(申命記11:26-32)

今後、イスラエルの上に成就した数々の預言を取り上げていくが、それらの預言が語られる背景や、その預言の成就には、一貫してこの原則が関係している。したがって、シナイ契約に関連する祝福と呪いの原則は、以降のイスラエルの歴史を理解する上で、欠かせないものとなっていくのである。

モーセの十戒|シナイ契約

モーセの十戒|シナイ契約

 

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(1)
動画の内容自体は、聖書の史実性を検証する上でとても役に立つものとなっています。ただし、製作元の「サンライズミニストリー」の母体は、SDA(セブンスデー・アドベンチスト)となっており、神学的にやや問題のある教会ですので、その点だけご注意下さい。

注(2)
祝福と呪いの原則は、以降のユダヤ人に対して時代を越えて適用されていきますが、シナイ契約自体は、イエスを仲介者とする新しい契約の発行に伴い、破棄されることになります。

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