6. 神による人類救済プログラムの全体像|聖書の教え
アダムとエバが罪を犯した後、神が宣言したのは裁きだけではない。神の性質で最も重要なものは、愛である。神は愛情深い方なので、罪と死によって呪われた人間を見捨てることはできない。神は裁きと同時に、堕落した人類と世界の状態を、元の聖い状態へと回復するための、救済計画を宣言した。
原福音~神による人類救済計画の預言
「神である主は蛇に仰せられた。『わたしは、おまえ(サタン)と女との間に、また、おまえの子孫と女の子孫との間に、敵意を置く。彼は(女の子孫)、おまえの頭を踏み砕き、おまえは、彼のかかとにかみつく。』」(創世記3:15)
アダムとエバには、確かに罪の責任があった。しかし、エデンの園での反逆において、最も責任が重かったのは、最初にエバを欺いたサタンである。そのためヤハウェは、この世界に罪をもたらした元凶である蛇(サタン)に対して裁きを言い渡し、最終的にサタンが神の力によって滅ぼされると預言した。
この宣言は、聖書の中で最初に登場する預言であり、専門的には「原福音」と呼ばれる。内容については追って解説するが、この預言が意図するゴールは、「女の子孫」として象徴される「救い主」の到来によって、「罪と死」、そして「サタン」が滅ぼされ、世界が元の状態へと回復する、というものである。
メシア~人類救済計画の中心人物
神による人類救済計画の鍵を握る人物とは、原福音の中で「女の子孫」として象徴される人物であり、聖書の中では「メシア」と呼ばれている。
「メシア(Messaiah)」とは、ヘブライ語で「聖油を注がれた者」を意味し、ギリシャ語では「キリスト(Christ)」、日本語に訳せば「救い主・救世主」である。
聖書預言において、メシアの称号が意味することは、神的な権威と力によってイスラエルと全世界を永遠に治める王である。その王は、聖書の神ヤハウェによる人類救済計画の中心人物であり、メシアの働きを通して、神の計画は完成される。その計画の全体像は、最初の書「創世記」から始まって、ジグソーパズルのように聖書全体に散りばめられており、最後の書「黙示録」によって、そのパズルは完成を見る。
人類救済計画(救済史)の段階
「まことに、神である主は、そのはかりごとを、ご自分のしもべ、預言者たちに示さないでは、何事もなさらない。」(アモス3:7)
神は、メシアによって堕落した世界を贖うご自身の計画を、原福音以降、預言者たちを通して、段階的に明らかにしていった。このような段階的な啓示の進展のことを、専門的には「漸進的啓示」と呼び、救済計画に関わる歴史全体のことを「救済史」と呼ぶ。
聖書の預言によって明らかにされた救済プログラムには、具体的な段階があり、それは以下のような流れである。
- 天地創造
- アダムとエバの罪による堕落
- メシア(キリスト)の到来に至る準備
- キリストの初臨(最初の到来)と、罪の贖い
- キリストの再臨(二度目の到来)と、全世界の裁き
- キリストの千年王国によって、堕落した世界が回復される
- 新しい天と地。古い世界が一新され、永遠の世界が再創造される。
1. 天地創造
創造主なる神は、六日間という期間をかけて、段階的に万物を創造していき、最後の六日目に、最初の人間アダムを創造した。そして、七日目に全ての創造の業を休み、その日を聖別した。神は全ての創造物をご覧になり、「極めて良い」と宣言した。(創世記1章)
2. アダムとエバの罪による堕落
ところが最初の人間夫婦は、神の命令に背き、禁じられていた善悪の知識の木の実から取って食べ、完全な世界に罪と死と呪いをもたらした。これが、人類史の堕落の始まりとなり、その結果がいかに悲惨なものかは、世界の歴史がそれを証明している。(創世記3章)
人類救済計画が明らかにされる
しかし、地球と人間に対する神の計画は挫折したわけではなかった。神には、一人の救い主となる人物を通して、アダムとエバによって堕落した世界を救い、人類と万物の状態を新たにする計画があったのである。
神ヤハウェは、アダムとエバの反逆後すぐに、「原福音」と呼ばれる預言を語り、以降の救済史の大原則とゴールを示した。
「わたしは、おまえと女との間に、また、おまえの子孫と女の子孫との間に、敵意を置く。彼は、おまえの頭を踏み砕き、おまえは、彼のかかとにかみつく。」(創世記3:15)
3. メシア(キリスト)の到来に至る準備
神は、アブラハムという人物と契約を結び[i]、彼の子孫からメシアが到来することを約束した。(創世記22章)またアブラハムの子孫から、神による選民としてイスラエル(ユダヤ人)を選び、選民としての彼らの歴史を通して、メシアの型と役割を示してきた。
そして、イスラエルから多くの預言者たちを起こし、メシアに関する預言(メシアの家系、到来時期、出身地、役割などの情報)を与え、神の計画を明らかにしていった。それらの預言が収められているのが、ユダヤ人が書いた旧約聖書である。
4. キリストの初臨(最初の到来)と罪の贖い
メシア預言の内容によれば、キリストは二度に渡る地上への到来を通して、救済計画を完成することになっていた。そして、紀元一世紀、初臨に関するメシア預言の成就として、満を持して登場したのが、イエス・キリストである。
初臨のメシアの主要な目的は、罪の贖いである。アダム以降、罪と死の奴隷状態となっていた人類を救済するためには、それらすべての罪を背負って身代わりの死を捧げる、罪の無い一人の人間が必要だった。
イエスはメシアとして、その役割を達成するために、自ら十字架に至り、罪の贖い成し遂げた。(マタイ20:28)これによって、悔い改める全ての人に、罪の赦しが与えられることが可能となった。
十字架によって明らかにされたのは、人間に対する神の愛情が、自身の命をさえ与えるほど、深いものだということである。(ヨハネ3:16)その後イエスは三日後に復活し、初臨に関する全てのメシア預言を成就して、天に帰っていった。(ルカ24 章)
5. キリストの再臨(二度目の到来)と、全世界の裁き
地上に、いつまでも神に従わない人間が住み続けるとすれば、救済計画は達成されないことになる。キリストの再臨は、全世界の裁き主、栄光の王としての到来であり、再臨の際、キリストは神に従う全ての人を救出すると共に、神に敵する全ての人に裁きをもたらす。(マタイ24~25)
サタンは捕らえられて「底知れぬ闇」と呼ばれる場所に閉じ込められ、一千年間の間、もはや人類を惑わすことはできなくなる。(黙示録20章)
聖書の中で、キリストの再臨は、「ノアの大洪水」に例えられている。かつて、全地球規模で大洪水が起き、神に背く全ての人々が滅ぼされたことがあったが、聖書の預言によれば、キリストの再臨の時もそれと同じように、地上の全ての不信仰な人々が、裁きによって滅ぼされることになる。
6. キリストの千年王国によって、堕落した世界が回復される
メシアによって統治されるメシア的王国(千年王国)は、千年に渡って地上全体を支配し、アダムの罪とサタンの反逆によって堕落した世界を、元の状態へと回復していく。この千年間の時代、地上はかつてなく繁栄し、正義と平和が特色とされる時代となる。メシアの統治に服する者は、永遠の命を得て千年間を生き延び、背く者は全て滅びることになる。(黙示録20章、イザヤ11章)
7. 新しい天と地。古い世界が一新され、永遠の世界が再創造される
千年が終わると、サタンが一時的に解き放たれ、最後の反逆が起きるが、すぐに神の裁きが下り、反逆は収束する。続いて、神は古い世界を一新し、新しい天と地を創造し、そこは永遠に続く世界となる。神に反逆した全ての者は、永遠の裁きを受けるが、神に従う者たちは限りなく永久に祝福を受ける。(黙示録 21~22章)
以上が、聖書の歴史と預言によって啓示されてきた、ヤハウェによる人類救済計画の全貌であり、人類の歴史は、この救済史の目的に沿って、最終的なゴールへと進んでいる。
「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子(救い主)を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。」(ヨハネ3:16)
神による救済プログラムの中心人物がメシアであるなら、私たちの永遠の運命は、イエスに対する信仰にかかっていると言える。
では、イエスこそが、聖書によって預言されていた救い主だと言える、どんな根拠があるのだろうか?次回からの記事では、その証拠について取り上げていく。
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脚注
[i] アブラハム契約:神が古代中近東に実在した人物アブラハムと結んだ契約であり、彼と彼の子孫に対して、祝福、土地、子孫に関する約束を伴ったものであった。このアブラハム契約によって、彼の子孫となるユダヤ人にパレスチナの土地が約束された。またアブラハムの子孫のユダヤ人民族から、メシアとなる人物が到来し、その人物を通して、全人類を祝福する、という約束も与えられた。
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