イエス・キリストは聖書で預言されていた救い主(メシア)なのか?(後編)


初臨に関するメシア預言の最大の特徴は「受難」である。メシアは最初の到来において、多くの苦しみを経験し、処刑されることになっていた。聖書は遠い昔から、メシアがどのような苦しみを受けるのか?またその後、どのような栄光を与えられるのかを預言していた。本記事では、メシアの受難とその後の栄光についての預言を紹介する。

イエスはどのようにメシア預言を成就したのか?

十字架

預言5)骨がことごとく外れる

「わたしは水のように注ぎ出され、わたしの骨はことごとくはずれ、わたしの心臓は、ろうのように、胸のうちで溶けた。」(詩篇22:14

預言の成就

イエスの身体は、まず十字架の上に寝かされて、釘を打たれて固定された。その後、イエスと共に寝かされていた十字架は垂直に起こされて、下側の先端が、十字架を立てるために掘られた溝にはめられる。その時の勢いで、全体重は固定された手足に一気にかかり、多くの骨が脱臼した。

米国の著名な医学博士「アレクサンダー・メルテル氏」は、十字架にかかった時にイエスに起きたことについて、次のように語っている。

「まず腕が横に15センチ伸びる。それから両肩が脱臼する。これは、簡単な方程式ですぐにわかることです。イエスの十字架刑の何百年も前に書かれた旧約聖書の詩編二十二編にある『わたしの骨は、みなはずれました』という預言が、ここで成就されたことになります」

預言6)手足が貫かれる

「悪を行う者の群れがわたしを囲んで、わたしの手と足を刺し貫いた。」詩篇22:16

預言の成就

イエスは十字架刑によって死を遂げた。十字架刑を受ける受刑者は、木に張り付けられるために、手と足に太い釘を打たれて、木に固定される。イエスは預言通り、手と足を貫かれて死んだのだ。

興味深いのは、この詩篇の預言が書かれたのは、BC1000年頃だが、その当時はまだ十字架刑のような処刑方法は存在していなかった。つまりこの預言は、メシアがどのような苦しみに遭うかだけでなく、どのような処刑方法が存在するようになるのかをも、的確に示したのである。

さらにもう一つ、イエスが死ぬほんの数年前、ユダヤ人は、ローマに死刑を執行する権利を剥奪された。ローマの処刑方法の一つは十字架刑だが、ユダヤ人が用いる処刑方法は、石打ちの刑であった。つまり、もしローマが死刑執行の権利をユダヤ人から奪わなかったら、イエスはユダヤ人によって石打の刑に処せられたことになり、この預言は成就しなかった。ここに私たちは、神の摂理を見ることができる。

預言7)衣服の分配のためにくじ引きが行われる

「彼らは互にわたしの衣服を分け、わたしの着物をくじ引にする。」(詩篇22:18)

預言の成就

「さて、兵卒たちイエスを十字架につけてからその上着をとって四つに分け、おのおの、その一つを取った。また下着を手に取ってみたが、それには縫い目がなく、上の方から全部一つに織ったものであった。そこで彼らは互に言った、『それを裂かないで、だれのものになるか、くじを引こう』。これは、『彼らは互にわたしの上着を分け合い、わたしの衣をくじ引にした』という聖書が成就するためで、兵卒たちはそのようにしたのである。」(ヨハネ19章23-24節)

当時の習慣では、処刑を担当した兵士たちが、処刑された罪人の来ていた衣を褒美としてもらうのは普通のことだった。イエスが来ていた外套(上着)は、縫い目の無い一枚織で高価なものだったが、そのような服は切り取って分配すれば価値が下がるため、兵卒たちをくじを引いて、誰のものになるのかを決めた。

イエスの衣服は、確かにくじ引きによって分配され、預言は成就した。

預言8)悪人と共に殺され、金持ちの墓に葬られる

「彼の墓は悪者どもとともに設けられ、彼は富む者とともに葬られた。彼は暴虐を行なわず、その口に欺きはなかったが。」(イザヤ53章9節)

預言の成就(1)「悪人と共に殺される」

そのとき、イエスといっしょに、ふたりの強盗が、ひとりは右に、ひとりは左に、十字架につけられた。」(マタイ27:38)

イエスは一人ではなく、二人の犯罪者たちと共に、十字架刑で罪人として処刑された。不当な裁判によって強引に有罪にされたイエスとは異なり、両脇で処刑された二人の男性は、れっきとした犯罪者だった。

預言の成就(2)「金持ちの墓に葬られる」

「57 夕方になって、アリマタヤの金持ちでヨセフという人が来た。彼もイエスの弟子になっていた。58 この人はピラトのところに行って、イエスのからだの下げ渡しを願った。そこで、ピラトは、渡すように命じた。59 ヨセフはそれを取り降ろして、きれいな亜麻布に包み、60 岩を掘って造った自分の新しい墓に納めた。墓の入口には大きな石をころがしかけて帰った。」(マタイ27:57-60)

イエスの死後、アリマタヤのヨセフという裕福な人物が、イエスの死体の引取を願い出て、自分のために用意されていた新しい空の墓に横たえた。ヨセフにとってイエスの遺体の引取を願い出ることは、社会的立場を危うくする大きなリスクがあった。しかし彼は、イエスに対する信仰から、勇気をもって願い出たのだった。

これらの記述は、疑いようも無い歴史的事実である。イエスは確かに、悪人と共に殺され、金持ちの墓に葬られ、こうして預言は成就した。

> キリストの十字架によって示された神の愛を知る

死体の引取を願い出たアリマタヤのヨセフ

死体の引取を願い出たアリマタヤのヨセフ

預言9)死者の中から復活する

彼が自分を、とがの供え物となすとき、その子孫を見ることができ、その命をながくすることができる。かつ主のみ旨が彼の手によって栄える」(イザヤ53:10

「とがの供え物」とは、メシアが人類の罪のために死ぬことを表している。しかし、メシアは一度死んだはずなのに、そのすぐ後に「その子孫を見る・・その命をながくする」ことになっている。この言葉は、生きている人間に適用される表現であり、死んだままの人間には適用できる言葉ではない。したがって、この聖句はメシアの復活を預言している聖句である。

預言の成就

「36 こういうことを話していると、イエス御自身が彼ら(弟子たち)の真ん中に立ち、「あなたがたに平和があるように」と言われた。37 彼らは恐れおののき、亡霊を見ているのだと思った。

38 そこで、イエスは言われた。「なぜ、うろたえているのか。どうして心に疑いを起こすのか。39 わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしだ。触ってよく見なさい。亡霊には肉も骨もないが、あなたがたに見えるとおり、わたしにはそれがある。」40 こう言って、イエスは手と足をお見せになった。

41 彼らが喜びのあまりまだ信じられず、不思議がっているので、イエスは、「ここに何か食べ物があるか」と言われた。42 そこで、焼いた魚を一切れ差し出すと、43 イエスはそれを取って、彼らの前で食べられた。

44 イエスは言われた。「わたしについてモーセの律法と預言者の書と詩編に書いてある事柄は、必ずすべて実現する。これこそ、まだあなたがたと一緒にいたころ、言っておいたことである。」45 そしてイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心の目を開いて、46 言われた。「次のように書いてある。『メシアは苦しみを受け、三日目に死者の中から復活する。47 また、罪の赦しを得させる悔い改めが、その名によってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる』と。」(ルカ24:36-47)

イエスの復活の記録について、簡単に信じることができる人は、おそらくほとんど居ないだろう。それも無理は無い。三年半もの間、イエスと常に一緒に居て数々の奇跡を目の当たりにした弟子たちでさえ、イエスの復活をすぐに信じることはできなかった。

しかし、上記引用聖句にもあるように、弟子たちは、復活したイエスが食事をとっている様子を、何度も目撃している。この事実は、イエスが復活したことと、その復活が霊的なものではなく、肉体的なものであったことを示している。

また、イエスが処刑された後、弟子たちは恐れていた。次は自分たちが処刑される番だと思ったからである。しかしそれまで臆病だった弟子たちは、イエスの復活を目撃した後、勇気をもって復活を証言する人間へと変えられた。彼らの多くは、迫害に遭い、最後には殉教の死を遂げた。イエスの復活を証言することによって、彼らが社会的に得られるメリットは何も無かった。ところが、彼らは死に至るまで、イエスの復活を証言し続けた。そして、自分たちもやがてイエスと同じように復活する、と信じて疑わなかった。

もしイエスの復活の記録が弟子たちの創作なら、彼らは実は復活を信じていなかったことになる。人は嘘のために人生をかけ、命を捨てることができるだろうか?彼らが生きた人生そのものが、イエスの復活を裏付ける強力な証拠といえる。

「復活は実際に起きた」これが、一連の証拠を考察した時に導き出される、最も合理的な結論である。詳細については、「キリストの復活は事実か?」を読むことをお勧めする。

預言10)世界中から救い主としての信仰を集める

主は仰せられる。「ただ、あなたがわたしのしもべとなって、ヤコブの諸部族を立たせ、イスラエルのとどめられている者たちを帰らせるだけではない。わたしはあなたを諸国の民の光とし、地の果てにまでわたしの救いをもたらす者とする。(イザヤ49:6)

このイザヤ書の預言によれば、「わたし(神)のしもべ」であるメシアとなる人物は、全世界の民族の救いの希望とならなければならない。

預言の成就

現在、世界の人口は約70億人だが、世界で最も多くの信者を誇るキリスト教の人口は、その内の3割にも上る22億人である。つまりイエスは、世界で最も多くの人間から「信仰の対象」として見られていることになる。

また、イエスが救い主であることを証言する書物である「聖書」は、人類史上最大のベストセラーであり、これまでの累計頒布数は直近の二百年だけでも累計約4000億にも上り、翻訳されている言語数も、約2800となっている。まさに世界中のあらゆる民族が読むことのできる唯一の書、それが聖書なのである。

これらの状況を考えると、このイザヤの預言が、イエスという一人の人物に対して歴史的・世界的に成就していることは明らかである。

世界のキリスト教人口(紫が人口の50%以上がクリスチャンの国)

イエスは約束されたメシアなのか?

これらの預言がイエスに成就したのは偶然ではないだろうか?

歴史上の特定の人物に、聖書の中の八つの預言が偶然に成就する確率を計算した学者がいる。計算をすると、その確率は、十京分の一(10の17乗)という、途方も無い数字になるようである。この確率を計算した専門家は、この件について以下のようなコメントを残している。

「もしそれだけの数のドル銀貨を敷き詰めるなら,テキサス州全体(69万平方㌔ 日本の2倍)が覆われ,その高さは60㌢に達するだろう。その1枚に印を付け,目隠しをした人に州全体を歩き回って銀貨を一つ拾い上げてもらうとしよう。印の付いた銀貨を拾い上げる確率はどれくらいだろうか。メシアに関するわずか八つの預言が歴史上のある人物に成就する確率は,それと同じである。」

この確率は、あくまで「八つの預言」を取り上げたものであり、イエスが成就したメシア預言の数は、実際には遥かに多い。したがって、「メシア預言の数々が、イエスに対して偶然に成就した」という説は確率論的に完全に排除される。

イエスは預言の内容に合わせて人生を生きたのではないだろうか?

イエスは、誕生した後に、聖書にあるメシア預言を学び、預言の内容に合うように人生を生きた、と反論する人もいる。数多くあるメシア預言の中には、確かに預言の内容に合うように行動することによって、成就するものも存在するが、そうではないものも多数存在する。ここで一度、これまでに紹介した預言をリストアップする。見ていただければわかるが、これらの預言は、どれも自分の力でコントロールすることが困難なものばかりである。

  1. アブラハム、ユダ、ダビデの家系から生まれる
  2. ベツレヘムで生まれる
  3. 貧しい家庭で生まれる
  4. メシアとして到来する時期が特定されている
  5. 骨がことごとく外れる
  6. 手足が貫かれる
  7. 衣服のためにくじ引きが行われる
  8. 悪人と共に殺され、金持ちの墓に葬られる
  9. 復活する
  10. 世界中から救い主としての信仰を集める

1~4の出生に関する預言については、生まれてからでは遅すぎる。どのような環境で生まれるかを自分でコントロールすることはできない。

5~7については、当時のローマの処刑方法や裁判事情に精通していれば、ある程度狙って成就することも考えられなくはないが、それでも、一度敵の手に落ちてしまえば、成り行きを自分で完全にコントロールできるものではない。

8番目の預言は、完全にコントロールが不可能だ。

そして、9~10の預言の成就は、目を見張るものがある。なぜなら、預言があったか無かったかに関わりなく、これを成し遂げたのが、人類の歴史上、イエス・キリストだけでからである。したがって、「イエスは預言の内容に合うように人生を生きた」と唱える説も、完全に排除されることになる。

イエスは初臨に関するメシア預言を成就した、歴史上唯一の人物である。

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本記事では、初臨に関するメシア預言の中でも、特に際立ったものを紹介した。しかし、これらはイエスが成就したメシア預言の、ほんの一部であり、イエスはその他のメシア預言も、ことごとく成就していった。したがって、イエスこそ、遠い昔から聖書の中で預言されていた「約束のメシア」なのである。

我々は、メシア預言の成就を知ることを通して、イエスがメシアであることを知るだけでなく、その背後に一貫して働いている、神の全能の力を知ることができる。遠い将来のことを預言し、その言葉を必ずその通りに果たすためには、万物を絶対的にコントロールする力が必要である。また未来に起きる事柄を、完全に見通すことができる予知力も必要である。それらの力が備わっていなければ、預言を100%の確率を持って成就させることは決してできない。

神がイエスを通して、初臨に関する預言を全て成就させたのであれば、再臨に関する驚くべき預言も、やがて全て成就するに違い無い。それは、やがてイエスが再び到来し、全世界に正義をもたらし、平和の君として永遠に世界を支配するようになることを意味する。

6 ひとりのみどりごが、私たちのために生まれる。ひとりの男の子が、私たちに与えられる。主権はその肩にあり、その名は「不思議な助言者、力ある神、永遠の父、平和の君」と呼ばれる。9:7 その主権は増し加わり、その平和は限りなく、ダビデの王座に着いて、その王国を治め、さばきと正義によってこれを堅く立て、これをささえる。今より、とこしえまで。万軍の主の熱心がこれを成し遂げる。」イザヤ9:6-7

昨今の世界は、混迷の度を深めている。環境問題、経済問題、その他地球規模のあらゆる問題が複雑に絡み合い、問題解決のための確かな見通しが立つことはない。しかし、私たちは失望する必要は無い。なぜなら、現代の世界の苦しみは、来たるべき世界の前触れであり、メシアの再臨によって世界に永遠の平和をもたらす、という神の約束は、信頼に値するからである。

もしあなたが聖書を開き、神の計画を学ぶならば、この世界や人生に対して、揺るぎない希望を手にすることになるだろう。

 

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5件のフィードバック

  1. パピ子 より:

    管理人さま、
    ご回答ありがとうございます。ユダヤ教は指導者の権威や影響力がとても強いのですね。これからも色々勉強していきたいと思います。ハーベストタイム(もちろんこちらのサイトを通じて知りました)の動画も視聴しています。

    また何かわからないことがあったら質問させていただければと思います。ご丁寧なお返事に感謝します(^^)

  2. パピ子 より:

    こんにちは。こちらのサイトは「聖書 写本 最古」でGoogle検索をしたらたどり着きまして、該当記事だけでなく他の記事もいくつか拝読しました。

    キリスト教については色々知りたいことがあり国内外の数多くのウェブサイト(プロテスタント・カトリックを問わずいくつもの教会や団体のHP、キリスト教徒らしき人のブログ、Q&Aサイト等々)を色々見てきましたが、コメントに丁寧に返信をしてくれているサイトはあまり見かけず、こちらがそのような印象を受けたので思い切って質問してみることにしました。

    前置きがものすごく長くなって失礼しましたが、質問はシンプルです。現在イスラエルでキリスト教徒の人口は、ざっと調べたところたったの2パーセントだったのですが、これだけキリスト教が世界中に広がったいま、そしてイザヤ書などでイエスについて預言されていたと思われる個所があるにもかかわらず、イスラエルの地で未だにイエスのことを「メシア」とは受け入れられない(ユダヤ教徒からキリスト教徒に改宗した人ももちろんいるとは思いますが)人が多いのは、どうした事情があるのでしょうか?聖書をあまりちゃんと読んでいない、あるいはイザヤ書などでの記述は認識していて「メシア」が来ることは信じているれども、それはイエスのことではない(Quoraという海外のQ&Aサイトでは、神殿を造らなかったことを理由に挙げている人がいました)、つまりイエスをメシアとみなすことはできないということでしょうか?

    当時のユダヤ教の指導者層が、イエスの教えが自分たちの立場を危うくしかねないから敵視した、というのは理解できます。しかし現代で一般市民のユダヤ教徒にキリスト教が浸透しないのはどのようなことが背景にあるとお考えですか?

    • true-ark より:

      はじめまして、コメント感謝です。コメントには、できるだけ返信できるよう努力しております。

      イスラエルに、クリスチャンが少ない理由はかなり単純で、今でも、紀元一世紀に起きたことと同じことを、ユダヤ教の宗教指導者たちがしているからです。つまり、イエスは魔術師のような存在であり、新約聖書は悪魔の書だ、というプロパガンダです。そして、今でも、ユダヤ人の多くは、ラビのいうことを信じていますので、ラビたちがイエスはだめだ、と言ったら、多数派はそれをしんじてしまうのです。なので、イスラエルの国内では、普通の書店では、新約聖書は買えません。

      それでも、近年、インターネットの影響もあり、また主の働きにより、少しずつ、イエスを信じるユダヤ人が増えてきております。

      メシアを信じたユダヤ人の証は、ハーベストタイムがYouTubeでたくさん翻訳していますので、それらを見れば、こういった事情に対する理解が深まるでしょう。

      パピ子さんの学びに、神の祝福がありますように。

  1. 2016-10-11

    […] 苦しみとその後の栄光に関する預言(後編) […]

  2. 2016-10-11

    […] 苦しみとその後の栄光に関する預言(後編) […]

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