預言されていたイスラエルの運命(3) 約束の土地の取得
前回は、イスラエル人がエジプトを脱出して荒野へ導かれたところまでを説明した。今回の記事では、イスラエル人による約束の土地の取得の流れを、預言との関連性から説明をする。
カナンの土地(パレスチナ)の取得に関する預言
■預言された年代: BC2000年頃~
■預言の成就: BC1400年代、イスラエルはカナンの全土の取得し始める。
「わたしは、あなたが滞在している地、すなわちカナンの全土を、あなたとあなたの後のあなたの子孫に永遠の所有として与える。わたしは、彼らの神となる。」(創世記17:8)
「1 主はモーセに仰せられた。「あなたも、あなたがエジプトの地から連れ上った民も、わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓って、『これをあなたの子孫に与える。』と言った地にここから上って行け。2 わたしはあなたがたの前にひとりの使いを遣わし、わたしが、カナン人、エモリ人、ヘテ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い払い、3 乳と蜜の流れる地にあなたがたを行かせよう。」(出エジプト33:1-3)
ヨシュア率いるイスラエルによる土地の取得
イスラエル人は、荒野で四十年の時を過ごした後、モーセの後継者ヨシュアに率いられて、カナンの全土を制圧し始める。ヨシュアが生きた世代のイスラエルは、神に対して従順であったため、神はイスラエルを祝福し、カナン人に対して自ら戦い、彼らの多くを、その地から追い払った。
ヨシュア12章には、ヨシュアの指導によって彼らが取得した西側の土地と、倒した王のリストが載っている。ヨシュアは合わせて三十一人もの王たちを打ち倒した。
ヨシュアとイスラエル人とがヨルダン川のこちら側、西のほうで、レバノンの谷にあるバアル・ガドから、セイルへ上って行くハラク山までの地で打った王たちは、次のとおりである。――ヨシュアはこの地をイスラエルの部族に、所有地、その割り当ての地として与えた。――
「8 これらは、山地、低地、アラバ、傾斜地、荒野、およびネゲブにおり、ヘテ人、エモリ人、カナン人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人であった。9 エリコの王ひとり。ベテルのそばのアイの王ひとり。10 エルサレムの王ひとり。ヘブロンの王ひとり。11 ヤルムテの王ひとり。ラキシュの王ひとり。12 エグロンの王ひとり。ゲゼルの王ひとり。13 デビルの王ひとり。ゲデルの王ひとり。14 ホルマの王ひとり。アラデの王ひとり。15 リブナの王ひとり。アドラムの王ひとり。16 マケダの王ひとり。ベテルの王ひとり。17 タプアハの王ひとり。ヘフェルの王ひとり。18 アフェクの王ひとり。シャロンの王ひとり。19 マドンの王ひとり。ハツォルの王ひとり。20 シムロン・メロンの王ひとり。アクシャフの王ひとり。21 タナクの王ひとり。メギドの王ひとり。22 ケデシュの王ひとり。カルメルのヨクネアムの王ひとり。23 ドルの高地にいるドルの王ひとり。ギルガルのゴイムの王ひとり。24 ティルツァの王ひとり。合計三十一人の王である。
ただし、その時代、神はカナンの地に住む全ての住民を追い払うことはしなかった。イスラエルはカナンの地の広範囲を取得したとはいえ、まだ未取得の地が多く残っていた。」(ヨシュア13章)
カナン征服は、一方的な侵略戦争なのか?
イスラエルのカナン征服は、無慈悲な侵略戦争ではないか?この点に関する誤解を解いておくために、ここで一旦、カナン征服の本質が何なのか?という点の説明を加えておく。
まず第一に、イスラエルの神ヤハウェの性質は、聖、義、愛である。神は愛によって、カナン人の罪が極みに達するまでの、およそ四百年もの間、彼らの裁きを控えていた。(創世記15:16)神が容認できなかったカナン人の罪とは、偶像礼拝に端を発した不道徳と性的堕落である。例えば彼らが行っていた礼拝には、性的な行為な行為や、子供を殺して生け贄として捧げることなども含まれていた。
聖書の歴史と一般の歴史の双方は、彼らが不道徳や堕落のとりわけ卑劣な記録を作り上げてきたことを、一貫して証言している。
聖に関する高い基準を持つ神は、罪をいつまでも容認できないので、正義によって、イスラエル人を用いてカナン人を裁いた。したがってカナン征服は、政治的な侵略戦争ではなく、神の裁きという宗教的なものである。また、ヤハウェがカナン人たちを滅ぼした別の目的は、イスラエル人をカナン人の文化の悪影響から守ることにもあった。
ダビデ~ソロモンの時代の繁栄
ダビデの支配
BC1000年頃、イスラエルのユダ部族出身のエッサイの子ダビデが、油を注がれてイスラエルを治める王として神から指名される。ダビデ王は清い心を持ち、勇気があり、神の律法に従順であったため、ヤハウェから愛され、神は彼と共にいた。
その結果、ダビデは連戦連勝を重ね、イスラエルと敵対していたあらゆる民族、フィリスティア人,シリア人,モアブ人,エドム人,アマレク人,アンモン人などを征服した。
そして、かつて神がアブラハムに約束した土地の広範囲を征服することに成功し、エジプトの川からユーフラテスまでに至るまで、その王国の領土を広げた。彼は神の祝福によって、周囲の国々から恐れられる、極めて強力な支配者となったのである。(歴代誌上14:17)
ソロモンの支配
次に、ダビデの息子のソロモンが、王権を継いだ。ソロモンは、若くして王となったが、ある時、イスラエルの神ヤハウェが彼に現れ、ソロモンが願い求めるものは、何でもそれを授けると語った。
ソロモンは、長寿や富を願い求めず、善悪をわきまえた賢い知恵によって国民を裁く能力を願い求めたので、神に大いに喜ばれた。結果として、神はソロモンに知恵だけでなく、富と栄光も与えると約束した。(列王記上3章)
神の約束通り、ソロモンは非常に賢い人となり、彼の知恵を聞くために、世界中から人がエルサレムへ訪れるほどであった。現代でも、「ソロモン」の名は、賢人の代名詞として、世界で広く認知されている。そしてソロモンの時代、イスラエルは空前の繁栄を遂げ、その繁栄とソロモンの名声は、遥か遠くの国にまで知れ渡った。(列王記上10:23-25)
そして重要なこととして、ソロモンの治世中、イスラエルの領土・支配地域は、神がアブラハムに約束した土地の範囲全域を網羅した。こうして、アブラハム契約の土地に関する約束は、一時的に成就を見ることとなった。
「ソロモンは、大河からペリシテ人の地、さらには、エジプトの国境に至るすべての王国を支配した。これらの王国は、ソロモンの一生の間みつぎものを持って来て、彼に仕えた。」(列王記上4:21)
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