創世記の真実―ソドムとゴモラの滅びは神話か?天の火、塩の柱、ロトの妻
ソドムとゴモラ~旧約聖書の創世記の中では、かつてこれらの町々が、神による天からの硫黄と火の裁きによって滅ぼされたと記録されている。ソドムとゴモラの実在や、硫黄と火による滅びについては、歴史的にその史実性が疑われてきたが、近年の考古学的な調査によって、その歴史性は裏付けられてきている。
今回の記事では、実際に遺跡を調査したチームの動画を紹介しながら、その真相に迫っていきたい。
聖書の記録「ソドムとゴモラの滅び」
アラビア半島北西部に、「死海」と呼ばれる湖がある。西側にイスラエル、東側をヨルダンに接するこの湖は、世界で最も海抜が低い場所(マイナス418m)として、また世界一塩分濃度の高い湖としても有名な場所である。
今から約四千年前、旧約聖書の創世記の記録によれば、この死海の周辺には、ソドムとゴモラと呼ばれる都市があった。これらの都市は、大きく繁栄していたが、道徳的には退廃の極みに達していたため、ついに神は、それらの町々を裁くために下っていった。
「ソドムとゴモラの叫びは非常に大きく、また彼らの罪はきわめて重い。21 わたしは下って行って、わたしに届いた叫びどおりに、彼らが実際に行なっているかどうかを見よう。」(創世記18:20-21)
神の友と呼ばれた義人アブラハムは、ソドムとゴモラのために執り成しを行い、十人の義人がそれらの町に見いだされるなら、彼らのために裁きを容赦するよう訴え、神はそれを聞き入れられた。
「彼はまた言った。「主よ。どうかお怒りにならないで、今一度だけ私に言わせてください。もしやそこに十人見つかるかもしれません。」すると主は仰せられた。「滅ぼすまい。その十人のために。」(創世記18:32)
神は、二人の天使たちをその町に送ったが、アブラハムの甥のロトは彼らを気遣い、家に泊まっていくようしきりに促した。ところがその晩、ソドムの町の人々は、見知らぬ二人の客人を辱めようとして、彼らを連れ出すために、ロトの家を取り囲んだ。
「今夜おまえのところにやって来た男たちはどこにいるのか。ここに連れ出せ。彼らをよく知りたいのだ。」(創世記19:5)※「よく知る」という言葉には、文脈上、暴力行為や性的な虐待の意味が含まれる。
天使たちは、襲ってきたソドムの人々の目を打って見えなくした後、ロトに対し、ソドムとゴモラの町々の裁きが決定されたことを告げ、身内の者たちと共に急いで逃げるよう訴えた。
「ふたりはロトに言った。『ほかにあなたの身内の者がここにいますか。あなたの婿やあなたの息子、娘、あるいはこの町にいるあなたの身内の者をみな、この場所から連れ出しなさい。13 わたしたちはこの場所を滅ぼそうとしているからです。彼らに対する叫びが主の前で大きくなったので、主はこの町を滅ぼすために、わたしたちを遣わされたのです。』」(創世記19:12-13)
ロトは、娘たちの婿の所へ行って警告をしたが、彼らにはロトの警告が冗談のように聞こえた。そして夜明けになると、天使たちはロトに対して、彼の妻と二人の娘たちだけを連れて急いで逃げるよう促し、彼らを連れ出した。
「いのちがけで逃げなさい。うしろを振り返ってはいけない。」(創世記19:17)
神は、アブラハムの甥のロトとその家族を町から救い出した後に、ついに天から火と硫黄を降らせ、それらの町々を焼き尽くした。アブラハムの執り成しも虚しく、それらの町々からは、十人の義人すら見出されることはなかったのだ。
そして、ロトの妻は「うしろを振り返ってはいけない」という天使の命令を無視したため、塩の柱と化してしまった。以上が、ソドムとゴモラの滅びに関する、聖書の記録の要約である。
23 太陽が地上に上ったころ、ロトはツォアルに着いた。24 そのとき、主はソドムとゴモラの上に、硫黄の火を天の主のところから降らせ、25 これらの町々と低地全体と、その町々の住民と、その地の植物をみな滅ぼされた。26 ロトのうしろにいた彼の妻は、振り返ったので、塩の柱になってしまった。(創世記19:23-26)
ソドムとゴモラの遺跡は実在した
下記の動画では、ソドムとゴモラ周辺の遺跡の調査の様子が紹介されている。詳しくは動画を見ることをお勧めするが、以下に内容の要約をしていく。
死海周辺の繁栄した都市の遺跡
調査の対象地域の死海周辺は、かつては青々とした肥沃な土地で、近くには繁栄した都市が幾つかあったが、現在は灰と化し、荒廃している。
実際の調査の結果、湖の南西岸の周辺に、かつてのソドム・ゴモラだと考えられる、灰と化した遺跡が発見されている。
これらの遺跡からは、たくさんの墓が見つかっているが、計算すると、当時のその都市の人口は、控えめに見積もっても、100万以上になるようだ。これらの都市が、いかに繁栄していたかがよくわかる数字である。
遺跡の成分―硫黄と硫酸カルシウムの意味とは
遺跡の成分による証拠
遺跡の成分を調査すると、それらが硫酸カルシウムで出来ていることがわかる。硫酸カルシウムとは、石灰岩が硫黄で燃やされたときにできる副産物である。
またこれらの地域からは、硫黄の純度が高い「硫黄の玉」をたくさん見つけることができるが、その玉の存在は、聖書の記録の通り、これらの都市が荒廃した理由が、硫黄によるものであったことを確かに裏付けている。
硫黄の原因は地熱活動ではない
死海周辺には、地熱活動がある場所もあるため、検出された硫黄が、地熱活動によるものであるかどうかは、確認をしなければならない。
検査の結果によれば、ゴモラで見つかった硫黄には、地熱地帯で検出される硫黄とは、明確な違いがある。
通常、地熱活動による硫黄の場合は、その純度が40%以下である。ところが、破壊された都市で見つかる硫黄からは、そのような低い純度の硫黄は見つからないのである。したがって、遺跡で検出される純度の高い硫黄の源は、地熱活動以外によるものだったことは明らかだ。
滅亡の原因―自然現象か超自然現象か?
大地震と液状化現象説
聖書の中で神による超自然現象として記録されている歴史について、それを過去に実際に起きた自然現象と結びつけようとする科学者は多い。このような試みは、ソドムとゴモラの火による滅びについても同様に行われているが、その中の一つに、「大地震と液状化現象説」が挙げられる。
以前にBS朝日で放映されたBBC地球伝説では、地質学者グレアム・ハリス、考古学者ジョナサン・タブ、そしてハル大学教授リン・フロスティックの三人が集結し、あらゆる調査と研究を重ね、「聖書に記されたソドムとゴモラの滅亡は、死海周辺に起こった大地震と、それに続いた液状化現象による地すべりという、自然現象を元に作られた話である」というグレアムの仮説を証明しようと試みた。
調査の結果、死海周辺の地層に大地震の爪あとが残っていたことや、ソドムとゴモラがあったとされる地域は地質学的に、液状化現象を起こしやすいことが明らかになった。そして、検証された仮説に基いて、これらの町々が滅びた「可能性」は明らかにされたが、それ以上のことはわからなかったようだ。
自然現象による説明の限界
聖書の奇跡を、その地域で起きたとされる自然現象と結びつけようとする場合、見落としてはならない点がある。つまり、その原因が自然現象であったにせよ、超自然現象であったにせよ、その現象が、その時、その場所で、神が定めたタイミングで起こった、ということだ。
ソドムとゴモラについても、それらの町々が滅びたタイミングは、ロトとその家族が町を脱出した後だった。したがって、その時に起きた現象は、どちらにしても神による介入を裏付けるものとなるのだ。
さらに、聖書に記録されている奇跡を自然現象で説明しようとする場合、その試みの背後には「神には奇跡を行う力は無い」という前提が存在することになる。しかし、聖書全体の歴史やその記録、今日の世界で実際に起きていることなどを見渡せば、神に超自然の奇跡を行う力があることは明らかだ。
例を挙げれば、イエス・キリストの生涯は、超自然の奇跡で満ち溢れており、敵であったユダヤ教の宗教指導者たちも、その事実を否定することはできなかった。したがって、超自然の奇跡の可能性を否定して聖書を読もうとすることは、それを生じさせた神の意図や聖書の著者の意図を読み間違える危険性を含んでしまうため、お勧めできるものではない。
ソドムとゴモラの遺跡から発見される純度の高い硫黄の玉は、地熱活動などの自然現象ではないことがわかっている。ならばその原因は、神による超自然現象だったと考えるのが自然な選択ではないだろうか?
ロトの妻の塩の柱は実在するか
ユダヤ人の歴史家であるフラウィウス・ヨセフスは、ロトの妻が塩の柱となったものを実際に見たことがある、と古代史の中で証言している。彼の言葉から、紀元一世紀当時、ソドムとゴモラの遺跡や、ロトの妻の塩の柱の場所は、ユダヤ人の間で明らかだったと推測できる。
「ところでロトの妻は、神に固く禁じられていたにもかかわらず、好奇心から町の運命を見定めようと、逃走中絶えず町の方を振り返ったため塩の柱に変えられてしまった。私は、現在も残っているこの柱を実際に見たことがある。」(フラウィウス・ヨセフス『ユダヤ古代誌①』84P、ちくま学芸文庫)
また、イスラエル南東部の死海西岸の公道90号線に沿ったソドム山の上には、「ロトの妻の塩の柱」と呼ばれる塩柱があり、現在は観光地にもなっている。ただし、その柱が、ロトの妻が柱となったものなのかどうかについては、それを証明する資料を当サイトはまだ見つけていない。
塩分濃度が高いことで知られる死海周辺は、塩が結晶化し、柱のようになること自体は珍しくなく、時には10メートル以上の高さになることもあるようだ。とある現地旅行者の話によれば、ガイドに「どれがロトの妻だ?」と尋ねた時に、「どれでも好きなやつを選べ」と返されたそうだ。
ロトの妻は、ソドムでの生活やそこに残した財産が気になったのだろうか?どちらにしても、彼女は「後ろを振り返るな」という神の命令を無視したために、その裁きを受けたのだ。
ソドムとゴモラから学ぶ歴史的教訓
ソドムとゴモラと周辺の地域に存在する遺跡の数々、またそれらの遺跡から検出される硫黄とその純度、これらの証拠を客観的に考察すると、旧約聖書の創世記に記録されているソドムとゴモラの滅びは、歴史的事実だったと言える十分な根拠がある。
それらの町々の人々は、神を信じず、自分たちの欲望に従って生活し、性的倒錯と暴力の罪に陥っていた。彼らに下った神の裁きが歴史的事実なのであれば、これからの人類の歴史に対しても、同じような裁きを持って神が介入する可能性について、真剣に考えなければならない。
そして、義人であったロトが確かに救われたのであれば、私たちも同じように、神の裁きから救われる生き方について、十分に吟味する必要があると言えるだろう。
「神は・・また、ソドムとゴモラの町を破滅に定めて灰にし、以後の不敬虔な者へのみせしめとされました。 7 また、無節操な者たちの好色なふるまいによって悩まされていた義人ロトを救い出されました。 ・・9 これらのことでわかるように、主は、敬虔な者たちを誘惑から救い出し、不義な者どもを、さばきの日まで、懲罰のもとに置くことを心得ておられるのです。」(第二ペテロ2:4-9)
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Most photos by Sunrise ministery.
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※動画の内容自体は、ソドムとゴモラの遺跡を説明する上で大変有益なものなのでご紹介しましたが、制作元の「サンライズ・ミニストリー」も母体は、教えの内容に対して問題が指摘されている教団ですので、その点はご注意下さい。
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